需要予測AIは生成AIか時系列モデルか、導入前の8項目

販売計画のAI予測、生成AIか時系列モデルか——Umiosの事例に見る、需要予測を自動化する前の確認項目

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この記事でわかること

  • Umios(旧マルハニチロ)が、全国の支社で手作業だった月次の販売計画づくりを、時系列基盤モデル「Chronos-2」の予測で自動化した
  • 生成AIチャットで予測を試したあと、予測専用のモデルに切り替えた。AIは「たたき台」までで、確定は人が行う
  • 自動化の前に確かめたいのは、学習に使うデータが「本当の需要」か、商品コードで履歴が切れていないか、人の確認をどこに残すか
目次

何が発表されたか

Umiosは2026年6月25日、AWS Summit Japan 2026の講演で、販売計画の自動化の取り組みを説明しました。講演資料によると、全国の支社の営業担当者が毎月、事業・商品・倉庫ごとに販売計画を予測して入力しており、全支社で年間約4,200時間を費やしていました。この4,200時間は業務用の事業だけの数字で、本番稼働後に削減できる見込みとして示されています。実績ではなく見込みです。

進め方は次のとおりです(講演資料のタイムライン)。

  • 2025年上半期: 社内の生成AIで予測を検証
  • 2025年12月: AWSから時系列基盤モデル「Chronos-2」の提案
  • 2026年2月: 予測の検証を本格化
  • 2026年4月: 事業部と運用を設計
  • 2026年6月: 本番稼働

@IT(2026年10月16日)も、この事例を詳しく報じています。

なぜ今これが問題になっているのか

販売計画は、生産計画と在庫の土台になる数字です。Umiosの資料は、課題を3つ挙げています。

  1. 営業が持つ「販売の増減の見込み」の入力が徹底されていない(システムに入れる支社、独自のExcelで管理する支社、運用が止まっている支社に分かれていた)
  2. 計画の精度が担当者の経験に頼っている
  3. 計画から生産への反映に時間がかかるため、「3カ月先」を当てなければならない

生成AIを社内に入れた会社では、「需要予測もチャットに聞けばいいのでは」という声が出やすいはずです。Umiosも最初はそこから始めました。結果は不採用です。@ITの報道では、社内の生成AIチャット(Claude Sonnet 4ベース)で予測を試しましたが、再現性とシステムへの組み込みに課題があったといいます。

仕組み

過去の販売実績と販売増減の見込みを時系列基盤モデルChronos-2に入れ、BIでの見える化と計画システムへの反映を経て、支社の担当者が10日間で確認して確定する流れの図

  • 入力: 過去の販売実績と、営業が入れる販売の増減の見込み。増減の見込みは、内製した簡易入力アプリの全国共通フォームで集め、毎月20日に締めて連携する
  • 予測: Chronos-2を毎日1回のバッチで動かす。既存の実績DBとBIツールには手を加えず、その外側に予測を足した構成(AWS Step Functions、AWS Lambda、Amazon SageMaker AI、Amazon Redshift など)
  • 出力: 下振れ・中央・安全側の3つの値(P10/P50/P90)。BIで予測・計画・実績を並べ、予測と計画の乖離にはアラートを出す。毎月20日に予測値を計画システムへ反映する
  • 確定: 支社の担当者が10日間で確認・修正し、営業が最終的に確定する

Chronos-2は、Amazonが公開している時系列予測用の基盤モデルです。公式のモデルカードでは、約1億2,000万パラメータで、事前学習済みのまま(追加の学習なしで)予測でき、結果を幅のある値(分位点)で返すと説明されています。Umiosの資料は、学習モデルを自前で作らずに済むので、学習と運用のコストを抑えられる点を選んだ理由に挙げています。AIを「作る」より「使う」を選んだ形です。

生成AIチャットで直接予測、自社で予測モデルを学習、学習済みの時系列基盤モデルの3案を比べ、時系列基盤モデルを採用したことを示す図

95%という数字は、読み方に注意が要ります。資料の「予測一致率95%」は、定番品の年累計の合計で見た値で、品目ごとの精度ではありません。季節によって売れ方が変わる商品では誤差が大きく、データの期間を1年から延ばし、「月」の情報を加えて改善したといいます。採用の基準は事前に事業部と決めていて、受け入れられる線を一致率6〜7割、自動化に使う線を80%以上としていました。

データの扱いでも2つの学びが書かれています。在庫を減らすための処分販売は「売れた量」であって需要ではないので、予測に使うデータから外しました。もう1つは失敗例で、規格が変わるたびにJANコードが変わり、ある冷凍食品では2010年から2025年までに5世代に分かれて販売履歴が途切れていました。マスターデータの整備は今後の課題とされています。まだ解決していません。

導入前に確かめること

  • 予測したいのは「売れた量」か「需要」か。値引き処分、欠品、特売で数字がゆがんだ期間を見分けられるか
  • 商品コードの付け替え(規格変更、リニューアル)で、同じ商品の履歴が途切れていないか。新旧コードの対応表はあるか
  • 営業の見込みなど、人が持っている情報を同じ形式で集める仕組みはあるか。支社や部署ごとにExcelがばらばらになっていないか
  • 生成AIチャットで予測を試すなら、同じ入力で同じ答えが返るかを先に確かめたか
  • 「何%なら使う」を、事業部と事前に決めたか。全体の合計で見るか、品目ごとに見るか
  • AIの予測をどこまで任せ、人はどこで確認・修正するか。確認の期間と、最終的に確定する人は決まっているか
  • 既存のDBや計画システムを作り直さずに、外側に足す形にできるか
  • 季節品・新商品・スポット品など、予測が外れやすい商品を最初の対象から外すか

向いている現場/向いていない現場

向いている向いていない
定番品が多く、数年分の販売実績がそろっている新商品やスポット品が中心で、履歴が短い
人手の計画づくりに毎月まとまった時間がかかっている計画を立てる人が少なく、手間が問題になっていない
人が確認して確定する流れを残せる予測値をそのまま発注や生産に使いたい

まとめ

Umiosの事例は、数値の予測には予測専用のモデルを選び、生成AIチャットを無理に使わなかった例です。資料の結びは「勝負どころは、予測モデルじゃなく、データと運用」で、実際に手間がかかったのも入力の統一や処分販売の除外、商品コードの問題でした。95%は定番品の年累計という条件つきの数字で、季節品や新商品を含めた精度は公開されていません。自社で検討するときは、上のチェックリストのうち、データの項目から先に確かめると進めやすくなります。

この記事では、Chronos-2を自分で動かして試してはいません。内容はUmiosの講演資料、Amazonのモデルカード、@ITの記事に基づきます。

参考(一次ソース)

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