この記事でわかること
- CEATEC 2026で、AWSジャパンと安川電機が「話しかけるとロボットが野菜を取る」デモを見せた。生成AIは会話をタスクに変える役、AIロボット「MOTOMAN NEXT」は見てつかむ役を受け持つ
- 形や置き方がそろわない物の扱いと、品種を切り替えるたびの再ティーチングが、これまで自動化を止めてきた。デモはこの2つに別々の答えを出している
- 導入を考えるときは、生成AIの出力をどんな形のタスクに固めるか、つかみ損ねたときにどう動くか、切り替えのたびに誰が何を設定するかを先に決めておく
何が発表されたか
CEATEC 2026(2026年10月13日〜16日、幕張メッセ)で、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)のブースに、安川電機との共同展示「未来の八百屋」が出ました。CEATECの出展者一覧でも、AWSの紹介文に安川電機の「未来の八百屋」をあわせて展示すると書かれています(安川電機は共同出展)。両社からこのデモ単独のニュースリリースは見つからなかったので、デモの中身は報道に基づいて書きます。
ITmedia NEWS(10月16日)の報道では、流れは次のとおりです。
- マイクに「カレーを作りたい」と話すと、生成AIの店員が具材と個数を提案する
- 「3人分くらいで」と答えると「じゃがいも3個とにんじん2個でよろしいですか」と確認が返る
- 承諾すると、安川電機のAIロボット「MOTOMAN NEXT」が棚から野菜を取り、買い物かごに入れる
読売新聞(10月15日)も、「中華料理が食べたい」と話すと献立を提案し、トマトをつかんでかごに入れる様子を報じています。役割分担ははっきりしています。ITmediaの報道では、AWSが受け持つのは人とロボットの間の「対話」です。Amazon Bedrock上の生成AIが発話の意図をくみ取り、ロボットが実行できる形のタスクに変えて渡します。ブースの担当者は「ロボットはタスクさえもらえれば自律的に動ける」と説明したそうです。
Amazon Bedrockは、AWSの公式ドキュメントでは、主要なAI企業の基盤モデルを使って生成AIアプリケーションを作れるフルマネージドサービスと説明されています。
同じAWSブースでは、AIエージェントが仮想空間で練習場づくりから採点までを回し、合格した版だけが実機のロボット(OpenArm v2)を動かす「Physical AI自律R&D基盤」も展示されました。こちらはCEATEC AWARD 2026のトランスフォーメーション賞を受けています。この記事では八百屋のデモに絞ります。
なぜ今これが問題になっているのか
産業用ロボットは、人が教えた動作をそのまま繰り返す「ティーチングプレイバック方式」で、溶接や塗装のような「同じ動きを、正確に、速く」の作業に広がってきました。安川電機のMOTOMAN NEXT紹介ページは、まだ自動化が進んでいない作業として、形や大きさが一つひとつ違う食品、やわらかく変形するケーブルや袋、「きれい」「問題なさそう」といった感覚の判断が要る作業を挙げています。
もう1つの壁は、入れたあとです。安川電機のテクニカルレポート(2026 No.5)は、中食・惣菜の現場では商品の切り替えのたびに再ティーチングや調整が要り、それが運用の大きな負担になると書いています。同じレポートの言葉では、問われるのは「導入できるか」ではなく「使い続けられるか」です。
つまり止まっている理由は2つあります。物がそろわないこと。そして、ロボットへの指示を変えるたびにロボットの技術者が要ること。八百屋のデモは、前者をロボット側の認識で、後者を会話で扱っています。
仕組み

会話の側(生成AI): 発話から「何を・いくつ」を決め、人に確認してから渡します。デモでは、個数の確認を取ってから動き出していました(ITmediaの報道)。
ロボットの側(MOTOMAN NEXT): ITmediaの報道では、ロボットは野菜の置き場所を暗記していません。おおまかな位置はデータベースで持ち、取りに行くたびに手首の3Dカメラで撮り直します。品種の判別は2D画像、つかむ位置の推定は3Dデータで行い、認識から動作計画までをクラウドを介さずロボット側のソフトウェアで処理しているといいます。かごに入れたあとは個数をカメラで数え直し、注文どおりそろうまで繰り返します。
ロボット側でこれができるのは、本体の作りによります。安川電機のテクニカルレポート(2026 No.3、2026年6月23日)によると、MOTOMAN NEXTは自律制御ユニット(ACU)を内蔵しています。ACUにはマシンビジョン、力覚、AI、パスプランニング(動作経路の計画)、ロボット制御の機能が入っています。AIを動かすGPUとセンサーも標準で載っていて、外付けのPCは要りません。シリーズの販売開始は2023年です。製品ページのラインアップには6機種が並び、たとえばNEX4は可搬質量4kg・リーチ550mm、NEX20は20kg・1550mm、人協働タイプのNHC12は12kg・1410mmです。
安川電機の資料には、工場や物流に近い使い方も出ています。
- 箱詰め(No.3): 商品の大きさ・重さ・割れやすさの情報をもとに、取り出す順番と置き場所をAIが決める。重い物は下、割れやすい物は上という人の判断の置き換え。学習はNVIDIA Isaac SimとIsaac Labの仮想空間で、強化学習で行った
- 透明カップの取り出し(No.3): 箱の中で曲がって連なったカップを認識し、つかむ位置を決めて装置に投入する。グループ会社エイアイキューブのソフトウェアパッケージ(AlliomWorks CupLoader)を使う
- 青果の向きそろえ(No.5): ばら積みのりんごのヘタの窪みを認識して向きをそろえる。特徴が見えなければ別の角度から撮り直し、つかみ損ねたら自動でやり直す
- 弁当のソース充填(No.5): 見本写真と実物を比べて、まだかかっていない所をAIが見つける。商品を切り替えるときは見本写真などを入れ替えるだけで、ロボット技術者による再ティーチングの負担を減らせるとしている
八百屋のデモで生成AIが受け持ったのは、ロボットにとっての「何を」の部分だけでした。「どうつかむか」はロボットに残っています。

この分け方には、現場から見て利点があります。会話の部分は答えが毎回少しずつ変わりうるクラウドの生成AIで、動作の部分はロボットの中で閉じています。両者の間に「品目と個数」という決まった形のタスクと、人の確認が1回入ります。生成AIの言い回しがぶれても、ロボットに届くのは確認済みのタスクだけです。ここは公開情報からの読み取りで、両社がそう説明しているわけではありません。
導入前に確かめること
- 生成AIからロボットに渡すタスクの形(品目・数量・置き場所・順番など)を決めたか。自由な文章のまま渡す作りになっていないか
- ロボットが動く前に、人が内容を確認する手順(復唱して承認)を入れるか
- 扱う物のばらつき(形・大きさ・向き・透明・やわらかさ)を書き出したか。認識で吸収するものと、置き方や治具で減らすものを分けたか
- 置き場所を固定できるか、それとも毎回撮り直す前提にするか
- 認識できない・つかみ損ねたときの動き(撮り直し、やり直し、人を呼ぶ)を決めたか
- 作業の結果(個数・向き)をロボット側で数え直すか、人が見るか
- 品種を切り替えるとき、誰が何を設定するか(再ティーチングか、見本写真や条件の登録か)
- 会話の部分がクラウドにある場合、通信が切れたら作業をどう続けるか
- 重さとリーチは機種の可搬質量・リーチに収まるか
- 出来合いのソフトウェアパッケージがある作業か、自前やSIerと作る作業か
向いている現場/向いていない現場
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 品種が多く、形や置き方が毎回少しずつ違う物をつかむ作業 | 同じ部品を同じ位置で取り続ける作業(ティーチングで足りる) |
| 注文や指示の内容が日ごとに変わり、そのたびに設定を変えている | 指示がほぼ固定で、変更がめったにない |
| 動く前に人が内容を確認する流れを残せる | 確認なしで、口頭の指示どおりに即動いてほしい |
| ロボットの専門家が常駐していない | 速度だけを詰めたい高速ライン(デモでは速度の数字は公表されていない) |
まとめ
八百屋のデモでは、生成AIの担当は「何を・いくつ」を決めて人に確認するところまででした。見る・つかむ・数え直すはロボットの中で処理されます。会話は指示を出す手間を減らし、ばらつきはロボット側の認識で吸収する。2つの壁に別々の道具を当てた形です。ただし展示のデモなので、成功率や1個あたりの時間、店舗や工場での稼働実績は公開されていません。自社で検討するなら、上のチェックリストのうち、タスクの形と、失敗したときの動きから先に決めると話が進めやすくなります。
この記事では、MOTOMAN NEXTも八百屋のデモも自分では試していません。内容はCEATECの公式サイト、安川電機の製品ページとテクニカルレポート、AWSの公式ドキュメント、ITmedia NEWSと読売新聞の報道に基づきます。
参考(一次ソース)
- CEATEC 2026 出展者一覧(アマゾン ウェブ サービス ジャパン/共同出展 安川電機)
- CEATEC AWARD 2026 受賞一覧
- 安川電機「AIロボット MOTOMAN NEXT」
- 安川電機 MOTOMAN NEXT 製品ページ(ラインアップ)
- 安川電機 テクニカルレポート 2026 No.3「人手に依存した作業領域の自動化に挑むAIロボティクス」(2026年6月23日)
- 安川電機 テクニカルレポート 2026 No.5「食品製造現場の持続可能な自動化への挑戦」
- AWS「Amazon Bedrock とは」
- ITmedia NEWS:「カレー作りたい」と注文→ロボが野菜をピックする「未来の八百屋」 AWS×安川電機が披露(2026年10月16日)
- 読売新聞:AIロボに「中華料理食べたい」と伝えたら献立提案、野菜を選んでかごに入れる(2026年10月15日)

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