前回の記事では、OpenAI Swarmの基本概念と可能性について解説しました。
今回は、実際のコード実装を通じて、具体的な活用方法をご紹介します。AIフロンティアでは、このたびGitHubにWikipedia分析用のSwarmエージェントを公開しました。
実装例:Wikipedia分析Swarmエージェント
エージェント設計の実際
このプロジェクトでは、2つの専門エージェントを実装しています:
研究エージェント(WikiResearcher)
- Wikipediaの記事を探索し、関連キーワードを抽出
- 日本語記事に特化した検索ロジックを実装
- 複数の記事から包括的な情報を収集
レポート作成エージェント(ReportWriter)
- 収集した情報を整理・分析
- 読みやすいレポート形式に変換
- 日本語での出力に最適化
コードの具体例
以下は、エージェントを初期化する核となるコードです:
def create_research_agent():
return Agent(
name="WikiResearcher",
instructions="""
あなたは質問に基づいてWikipedia記事を探すエージェントです。
以下のルールを必ず守ってください:
1. 必ず日本語版Wikipediaに存在する基本的な名詞の記事タイトルのみを選択
2. 以下のような記事タイトルは絶対に避ける:
- 動詞や助詞を含むフレーズ(例:「〜における〜」「〜の歴史」)
- 造語や複合フレーズ(例:「AIの進化」「未来技術」)
- カタカナ用語は基本形を使用(例:「コンピュータ」ではなく「計算機」)
3. 記事タイトルは以下のような基本的な名詞を選ぶ:
- 技術用語の例:人工知能、機械学習、ニューラルネットワーク
- 概念の例:知能、認知、学習
- 分野の例:情報工学、計算機科学
以下の形式で出力してください:
---
KEY1: [基本名詞1]
KEY2: [基本名詞2]
KEY3: [基本名詞3]
---
"""
)
def create_report_agent():
return Agent(
name="ReportWriter",
instructions="""
あなたは収集された情報を整理してレポートを作成するエージェントです。
以下の形式で必ずレポートを作成してください:
# 分析レポート
## 📋 概要
[質問の要点と主要な発見事項をまとめる]
## 🔍 詳細分析
[重要なポイントの詳細な説明]
## 💡 まとめ
[質問に対する直接的な回答と追加の考察]
## 📚 参考情報
[使用した記事や追加の参考情報]
---
lang:ja
"""
)
実行結果
実際に動かしてみた結果を共有します。
今回は「生成AIの進化」と入力してみました。
- 途中の処理
----------------------------------------
🔍 調べたいことを入力してください:生成AIの進化
🎯 分析を開始: '生成AIの進化'
🤖 調査エージェントを初期化中...
📝 レポート作成エージェントを初期化中...
📚 研究エージェントによるキーワード抽出を開始...
🔑 抽出されたキーワード: ['人工知能', '機械学習', '計算機科学']
📖 キーワード '人工知能' の記事を取得中...
🔍 Wikipedia記事「人工知能」の取得を開始...
📡 アクセスするURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD
📥 ステータスコード: 200
📑 記事タイトル: 人工知能
📚 目次セクション数: 0
📝 取得したパラグラフ数: 128
📖 キーワード '機械学習' の記事を取得中...
🔍 Wikipedia記事「機械学習」の取得を開始...
📡 アクセスするURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E5%AD%A6%E7%BF%92
📥 ステータスコード: 200
📑 記事タイトル: 機械学習
📚 目次セクション数: 0
📝 取得したパラグラフ数: 62
📖 キーワード '計算機科学' の記事を取得中...
🔍 Wikipedia記事「計算機科学」の取得を開始...
📡 アクセスするURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E7%AE%97%E6%A9%9F%E7%A7%91%E5%AD%A6
📥 ステータスコード: 200
📑 記事タイトル: 計算機科学
📚 目次セクション数: 0
📝 取得したパラグラフ数: 13
- レポート出力
📊 最終レポート:
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# 分析レポート
## 📋 概要
このレポートでは、人工知能(AI)特に生成AIの進化について分析します。AIは1950年代から進化を続けており、ディープラーニングや生成AIなどの技術革新を経て、さまざまな分野で実用化されています。近年の生成AIは特に注目されており、学術研究から商業用途まで急速に適用範囲が広がっています。
## 🔍 詳細分析
生成AIの進化は以下のポイントに集約できます:
1. **技術的進化の歴史**:
- AIの研究は1950年代から始まりました。最初は探索と推論、知識表現などが主なテーマでしたが、これらは限界に突き当たり進展が停滞することも多々ありました。
- 第3次AIブーム以降、特にディープラーニングの発展によって画像処理や自然言語処理が飛躍的に進化し、生成AIの基盤が整いました。
2. **生成AIの出現と社会的影響**:
- 2012年にAlexnetが登場し、AIの視覚分野での能力を格段に向上させました。
- 2022年にOpenAIがChatGPTをリリース。この生成AIは精密な質問応答能力で注目され、企業の競争を加速させました。
- 生成AIは教育、医療、音楽、芸術の分野などでも活用され、社会に大きな影響を与えています。
3. **倫理的および社会的課題**:
- 知的財産権の問題が浮上しています。生成AIは訓練に大量のデータを必要とし、その中に著作権で保護されたコンテンツを含むことが多いため、法的な議論が続いています。
- AIによるプライバシーの侵害や、偏りのあるデータに基づく不正確な判断が懸念されています。
4. **未来展望と課題**:
- 大規模な学習モデルの登場により、今後はさらなる性能向上が期待されていますが、電力消費の増加や、データ処理の倫理的問題をどうクリアするかが課題です。
## 💡 まとめ
生成AIは技術的にも社会的にも進化を続け、人々の生活や産業に多大な影響を与えている。今後、その能力がさらに向上し、多様な分野での適用が拡大することが予想される一方、法的や倫理的課題への対処が不可欠です。
## 📚 参考情報
- 『人工知能』および『機械学習』に関する記事
- 日経新聞、OECDおよび米国の研究機関からの報告
- OpenAIのChatGPTリリースに関する情報
- GoogleやDeepMindのAIプロジェクト에 대한 최근 정보
- 各国政府のAI戦略 및 관련 법률과 규정에 대한 개요
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lang:ja
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マルチエージェントシステムの強み
今回のWikipedia分析の実行結果から、以下のような特徴的な強みが確認できました。
1. 役割分担による効率的な処理
- WikiResearcherによる的確なキーワード抽出
- ReportWriterによる構造化された分析レポートの生成
- エージェント間の連携による複雑なタスクの自動化
2. 高度な情報処理能力
- 128件のパラグラフから重要情報を抽出
- 複数の記事を横断的に分析
- 構造化された形式でのレポート生成
実践的なビジネス応用の可能性
インテリジェンス強化による市場優位性の確立
想像してみてください。毎朝出社すると、すでにAIエージェントが夜通し収集した市場動向レポートがあなたのデスクに届いています。競合他社の動きや、業界の最新トレンド、そして潜在的な事業機会まで、すべてが整理された形で提供されているのです。
これはもはや空想ではありません。今回開発したWikipedia分析システムは、そんな未来への第一歩となります。例えば、金融業界では、複数のAIエージェントが24時間体制でグローバル市場を監視し、リアルタイムでリスク分析を行うことが可能になります。製造業では、サプライチェーン全体を通じた異常検知と予測保全が、人間の介入なしで実現できるでしょう。
カスタマーエクスペリエンスの革新
さらに興味深いのは、カスタマーサービスの変革です。従来の単純な自動応答システムとは異なり、複数のAIエージェントが協調して顧客の問題解決にあたります。例えば、あるエージェントが顧客の質問の文脈を理解し、別のエージェントが関連する技術情報を収集し、さらに別のエージェントが最適な解決策を提案する―このような重層的なサービス提供が可能になるのです。
まとめ
このシステムの開発を通じて、Swarmの実用性と将来性が実証されました。
特に、複数エージェントの協調による高度な情報処理能力は、ビジネスプロセスの自動化に大きな可能性を示しています。
今後は、より専門的なドメイン知識を持つエージェントの開発や、リアルタイムデータ処理能力の強化を進めていく予定です。
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